私の子は2歳です。そして、夫は黒人のアメリカ人。子供は、パッと見ただけでもハーフと分かるくらい、アメリカよりの顔立ちです。色も黒めです。
そんな2歳の子供ですが、実はすでに、偏見の目で見られ、差別を受けているのです。
まだ2歳なのに!?と驚くでしょうか?
いえいえ、生まれた時からそうなのです。
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見た目で差別を受けてしまうハーフの子
私の子は、生まれた時から、本当によく夫に似ていて、色が黒く、目がパッチリ、表情もアメリカンなのです。どう考えても、私と子供だけで歩いていると違和感があるのでしょう。それは否定しません。見た目が日本人離れしていますから。
けれども、興味本位な眼差しで見られること、あからさまに差別を受けること、偏見の目で見られることは、私にとっても子供にとっても不本意なことです。私の血もしっかりと受け継がれていて、子供の半分はれっきとした日本人です。
0~1歳児の頃は、何かと小児科などに行くことが多かったです。「何ヶ月ですか?」「男の子?女の子?」なんて会話は当たり前に交わされていました。見知らぬ人でも、赤ちゃんがいることでお互いに親しみを感じているような雰囲気がありました。
でも、私の場合は、「え?!」という絶句のような何とも言えない雰囲気から始まることが多かったです。そして、聞かれることは、「何人なんですか?」「ハーフなんですか?」と遠慮がちに聞いてくる人もいれば、「日本人じゃないですよね!?」「うわー、色、黒いですね!」「旦那さん、黒人ですか?」なんていうことをいきなり言ってくる人もいました。
初めての出産、初めての育児、初めての小児科通い。私も私でいっぱいいっぱいでした。あの頃は、サラッと流したり、適当に受け流したりすることができなくて、一つひとつのやり取りに傷ついたり、家に帰って涙をしたこともありました。時には、ずっと、立って抱っこして、子供の顔が見えないように、他の人に話しかけられないように、警戒していた時もありました。
「おめめパッチリでかわいい!」と言われて
小児科でよく顔を合わせるママさんがいました。予防接種を受ける日がよく重なっていたようで、お互い、「あの人だ」くらいの認識でした、話したことはほとんどなかったのですが、何となく、目が合うと会釈ぽいことをしていました。
ある日、そのママさんに近くのスーパーでばったり会ったんです。お互いに目が合った瞬間に、「あ!こんにちは~」とあいさつしていました。私は抱っこ紐で、彼女はベビーカーで子供を連れていました。
彼女は、私の子を見て、「おめめパッチリでかわいい!」と頬を軽く撫でてくれたんです。すごくビックリしました。こんな風に、何の抵抗もなく言われることがほとんどなかったので。でも、その理由がすぐに分かりました。
「ウチも、ハーフなのよ。分からないでしょう?」と。彼女は笑っていました。
彼女は、中国人の御主人がいて、お子さんは中国とのハーフ。でも、同じアジア人なので、見た目では全然ハーフと分かりません。私もハーフと聞いてとても驚きましたけど、一気に親近感が湧いたのです。
そのまま近くの公園のベンチに座っておしゃべりをすることに。彼女は、時折、私が小児科で他のママさんから心無い言葉をかけられていることを見かけていて、とても気の毒に思っていてくれたそうです。いつかチャンスがあったら話をしてみたい、と思っていてくれたそうなのです。でも私は、なるべく他のママさんから話しかけられないようにしていたのもあって、なかなかハードルが高かった、と。
あの時の偶然の出会いは、今でも鮮明に覚えています。あれ以来、良いお友達付き合いをしていて、国際結婚をしている日本人女性同士、ハーフをもつママ同士として、いろいろな話ができています。
「自信を持ちなよ」という夫の言葉
一時期、私は外出するのが非常に億劫な時がありました。赤ちゃんを連れていれば、「かわいいわね」と話しかけてくる人が意外と多くいます。そして、私の子を見て、「え!?」という反応をする人も決して少なくありませんでした。もう、その反応が嫌で嫌で、ネットスーパーを利用したりして、極力、外に出ないことがありました。
そんな時、夫が言った一言が、「自信を持ちなよ」、でした。
夫も来日当初から、「外国人」「黒人」という偏見の目で見られています。夫自身、そのような日本人の反応に驚きは隠せなかったようです。居心地の悪さを感じ、何も悪いことをしていないのに何故か後ろめたいような犯罪者のような気分だったそうです。初めの1,2ヶ月は日本に住むこと、日本人の子供たちに英語を教えることも苦痛に感じてしまったそうです。
そして、私と出会い、そんな話を夫から聞いた私は、「自信を持ちなよ」と言ったそうです。会った当日です。“言ったそうです”というのは、実は私はまったく覚えていなかったのです。おかしいですね。
夫は、初めて会った日本人の女性(私)に、「自信を持ちなよ」と勇気づけられ、それをきっかけに一気に気持ちが明るくなり、日本に住むことや子供たちに英語を教えることに非常に積極的になれたそうです。一般の日本人からの偏見の目も、見た目が違うんだから仕方ない、外国人なんだから仕方ない、と割り切れるようになったそうです。
結婚し、子供ができて、子供に対する偏見の目で悩んだ私に、夫は初めて当時のことを話してくれたのです。驚きました。「自信を持ちなよ」の一言で、夫は私のとりこにもなったそうです。笑
「えー、その顔で日本人って冗談でしょ!大笑」
子供が1歳半を過ぎた頃には、子供の見た目に対する異様な反応や心ない言葉にも、それなりにうまく対処できるようになってきました。私自身、「この子は私の子、正真正銘私の子、何も恥じることはないんだ」、という確固たる気持ちが出てきて、自信を持てるようになったからだと思います。
でも、そんな時に、“事件”は起きました。
1歳過ぎて上手に歩けるようになってくると、一日中家にいるだけでは時間を持て余すようになってました。お昼寝の時間もどんどん減ってきて、子供は外に出たがります。なので、その日の天気次第で、公園に行ったり、児童館に行ったり、ちょっと遠出の買い物に行ったりしていました。
ある日、未就園児の子が集まる児童館に行った時のことです。3回目に遊びに行った時です。数人のママさんと、子供を遊ばせながら、何となくおしゃべりをしていたのです。初対面の方もいれば、前回も一緒だった方もいました。
そのうちの一人、初対面のママさんから、矢継ぎ早に質問をされたのです。「その子、何人なの?」「パパがアフリカ人とか?」、いきなりのことに私だけでなく、他のまわりのママさんも固まってしまいました。すると、そのママさん、「聞きたいよね?」「気になるよね?」とまわりのママさんに同調を求め始めて、みなさん、反応に困ってしまいました。
それで私は、「パパはアメリカ人で、この子はハーフだけど、私が日本人なので半分は日本人なんですよ」と答えると、なんとそのママさん、「えー、その顔で日本人って冗談でしょ!」と手を叩きながら大笑いしたんです。私も、まわりにいたママさんも、困惑顔。それでも彼女は続けました。「そんな顔でね、日本の幼稚園とか学校行かせたら、確実にいじめにあうからね。無理無理。ハーフとか絶対にありえないから」とかなんとか、すごい勢いで話していました。
今思い出しても、ムカムカしてしまいますが、私はその時、サッと荷物と子供を抱きかかえて、その場から何も言わずに立ち去りました。子供の前では冷静を装って家に戻り、子供がお昼寝したところで、例の中国人の御主人がいる友達に電話をして話を聞いてもらいました。そして、夫が帰宅してから、話を聞いてもらいました。
少し前の私だったら、一人傷つきショックで泣いていたかもしれません。でも、その時の私は、分かってくれる人に話を聞いてもらうことで、スッキリできていました。
この時のママさんは、ある意味、特殊です。けれど、そういう人、そういう風に思う人は、意外と身近にもいるものです。口に出すか出さないか、その違いだけかもしれません。そういう人達とまともにやりあっても仕方ないです。意味がないです。
幸いにも、その児童館は自宅から少し離れているところでした。今後、幼稚園や小学校で一緒になる可能性は低いかと思います。けれども、少しの間は、またあのママさんに会ったら嫌だな、という気持ちはありました。あれから一年近く経ちますが、再び会うことはありません。あの児童館にも行っていません。
親の偏見が子にも移る
徐々に、ハーフを持つママさんのネットワークが広がりつつあります。直接の友人は少ないですが、ブログなどを通して交流している方は多数います。実際に会ったことがない、顔を知らない、けれど、同じようにハーフを持ち、外国人の御主人がいるという共通点で、非常に深いおつきあいをできている方もいます。
すでに、小学生や中学生、高校生のお子さんを持つ方もいます。そのような先輩ママさんの話を聞いていると、子供がハーフや外国人に対して偏見がある子、いじめをしてくるような子は、必ずと言っていいほど親がそういう感覚を持っているようです。親の感覚は子に移ります。
ですので、不用意に、夫が外国人であること、子供がハーフであることは言わない方が良い、とよく言われます。幼稚園でも小学校でも、主に関わるのは母親です。母親が日本人であれば、アジア人とのハーフだと見た目には分からないことも多いのです。だから、余計なことは言わない、必要以上に深く付き合わない、というのをみなさん、よく言われます。
けれど、我が家の場合は、子供は見た目ですぐに分かるほどのハーフ顔です。これから、幼稚園、小学校と進んでいくわけですが、子供が他の子からどういう風にうつるのか、まだまだ未知の世界です。私自身がどう対応していくのか、我が子にどういう風に話をしていくのか、目下の課題でもありますが、同じ境遇に先輩ママさんとのお付き合いから教えてもらえることも非常にたくさんあって、非常に心強いです。
最後に
生まれた時から、色黒で、目がパッチリ、一目でハーフと分かってしまう我が子。時には、見知らぬ人からの心無い一言に、私が傷つき落ち込みもしました。
けれど、私と夫の子供です。夫はアメリカ人であり、黒人です。何も恥ずかしいことも、後ろめたいこともありません。
そうは分かっていても、世間一般では、いろいろ偏見の目もありますし、いじめの対象になるようなこともあるかもしれません。非常に理不尽なことですが、それが社会でもあったりします。
その中で、私はどうしていけば良いのでしょうか? まだまだ答えは見えていませんし、決まった答えはないのかもしれません。それでも、子供が自信を持って生きていけるように、私たち夫婦が考えていかなくてはいけないことだと思っています。
ハーフだからといって何か差別されて当たり前ということは絶対にないのです。けれども、いろいろな方がいます。子供をしっかりと守らないといけないのです。
(日本在住Eさん:アメリカ人のご主人とハーフのお子さんがいるライター)
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